インターネット誹謗中傷被害

ケース その1

Googleマップのコメント欄に、根拠のないお店の悪評を書かれたとのことで、Googleとの間で、誰が書いたかを特定するための「発信者情報開示請求」と、記事を消すための「記事削除請求」の2つの保全申立をしました。

発信者情報開示請求は、Googleに投稿者のIPアドレスを開示させて(保全①)、開示されたIPアドレスから経由プロバイダが分かるので、プロバイダにそのIPアドレスで投稿した人の名前や住所などを開示させる(保全②)、という2段階の保全申立が必要になります。

しかし、プロバイダは通信記録を3~6か月程度しか保存していないことが多いため、かなりタイトな時間との勝負になります。

ところが、Googleは日本に会社があるにもかかわらず、訴訟対応は米カリフォルニア本社のみです。ですので、まずはGoogleの登記をカリフォルニアに国際郵便で取り寄せますが、これに1か月ほどかかります。その間に保全申立書の作成や英訳をしておいて、登記が届き次第申し立てますが、審尋期日は3週間くらい先です。しかも発信者情報開示請求については海外の会社が相手の場合、東京地裁まで行かないといけないので、一苦労して予定を合わせます。

しかし、審尋期日が近くなると、Googleの代理人弁護士から連絡があって、「委任状が届いていないから3週間先にしてほしい。」との連絡があります。すでに2か月近く経過していますから、さらに3週間先にされると、直ちに開示命令が出て開示されたとしても、そこからプロバイダへの保全②をやっていたら間に合わない可能性大です。しかも、Googleは開示も削除も必ず争ってきますので、更に反論のための追加の期日となったときには絶望的です。

先日、歯科医が同様にGoogleに発信者情報開示請求をしたところ、何とか認められたのですが、Google側では既にIPアドレスが保存されていなかった、というニュースも出ていました。

これでは、根拠のない悪評を書かれた方は泣き寝入りしかない状況ですし、書いた方は匿名なのをいいことに書きたい放題です。真実に基づく投稿なのか、根拠のない誹謗中傷なのかは、速やかに投稿者を開示して当事者同士で話し合うのが本筋だと思います。この状態が表現の自由の正しい形とは思えません。Google他プロバイダも含めて、表現を仲介する者の責任として、発信者情報の記録の保存期間をもっと長くし、開示には素直に応じるという姿勢が必要だと思います。


ケース その2

次に、記事の削除請求についてです。

これもGoogleを相手として保全を申し立てたのですが、この管轄は被害者の住所地の裁判所ですので、開示請求よりはやりやすいです。また、開示請求のように時間的にタイトなわけでないので、その点でもやりやすいです。(早く削除してほしい、という意味では時間的にタイトですが。)
しかし、請求は簡単には認められません。記事の削除は記事そのものを抹消するため、投稿者の開示よりも表現の自由に対する慎重な考慮を要します。

削除請求においても開示請求と同じく、投稿内容に真実性がないことの疎明を求められます。名誉棄損の違法性阻却のためには真実性の証明が必要ですが、この場合は逆になり、真実性がないことの疎明を求められるのです。しかし、そもそも存在しない事実を疎明しろ、というのは疎明の程度を厳しくすればするほど、悪魔の証明に近づき、不可能を強いられることになります。逆に投稿者にとっても、自分の関与しないところで抹消されてしまうより、反論の機会を与えられるべきだと思います。

この意味でも、削除請求の前提として投稿者を速やかに開示して、投稿者に真実性の証明をさせることが双方にとって公平、公正だと思います。

また、真実性とは論点が異なりますが、先日の開示請求の記事で書いた歯科医師の事件では、抹消請求をしたが裁判所から「具体的な損害」を疎明するように求められたため、取り下げたとのことでした。しかし、本訴で結論が出るまでの間に損害が発生しないように保全申立てをしているのですから、「具体的損害」はこれから発生するのです。それを疎明しろ、というのは無理な要求だと思います。

匿名で書いた者勝ちで、多くの被害者が泣き寝入りせざるをえない現状は、Googleのようなサイト運営者や裁判所の考え方が変わらない限り改善しないと思います。


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